台湾から始まった一人旅
旅なんて、まったく興味がなかった。
風景を見てまわって楽しいものなのかしらん、と思っていた。
そのうち海外旅行に行くようになり、ああ、旅とは異国情緒を楽しむものなんだなあ、あとホテルステイもいいもんだなあと理解した。
けれど、一人旅をする人の気持ちはまったくわからなかった。
気のおけない友人とあれやこれや言いながら過ごす、その時間こそ旅の楽しさなんじゃないのかと。
30歳を過ぎ、それまで勤めていた会社を辞めて自由業となり、時間に余裕ができてきた頃。そんなタイミングで、宮田珠己氏の著書『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)を読んで衝撃を受けた。
それから宮田氏の書籍を貪るように読んで、わたしは旅の良さも何もまだわからないままに、せき立てられるように「まずは台湾へ一人旅に行こう」と思ったのだった。「何か楽しいことがあるのかもしれない」とそう思ったのだった。
海外はおろか国内旅行経験すらほとんどない。不安だらけの中びびりながら赴いた台湾。
備忘録をさらりと書いておこう。
行くぞ台北
台北に決めた理由は、単純に一人旅しやすそうというのと、美味しいご飯が食べられそうということ。ガイドブックに付箋を貼って妄想を膨らませたりしながら。準備もたのしい。
2泊3日というタイトな旅。
本当はもっと滞在したいのだけれど、自由業ゆえ「仕事が急に入ってきたらどうしよう…」と心配してこの日程なのだ。旅の前からびびっている。
エバー航空にて関空から桃園国際空港までひとっ飛び。たしかチケットは往復3万円しなかったと思われる。
にしても、空港の雰囲気ってほんとたまらない。すごく開放的だし、旅気分が極まる。いろんな国の人が歩いてるのもいい。
みんな大好き機内食。
美味しかったような、そうでもなかったような。肉の冷凍感がすごかったような気がする。
空港から台北市内までは、高速バスを使って行くのだ。これも緊張したなあ。
何しろわたしサイドに余裕がぜんぜんないもんだから、バス受付のおばちゃんの言うことを聞き逃すまいと必死。異国情緒もへったくれも感じることなく乗車したのであった。
乗車してからは、iPhoneのマップと照らし合わせながら一瞬も休むことなく道を確認。んなことしなくても大丈夫だから…と当時のわたしに言ってあげたいものです。
「ガーラホテル」というホテルにチェックイン。シンプルでアクセスもよくよかった。
そう、これが食べたかったのだ。豆花。
『孤独のグルメ』(テレ東系)の五郎さんが美味しそうに食べているのを観て、たまらなくて。
めっちゃめちゃ美味しかった。「おいしっ…」って独り言でた。
屋台で魯肉飯を食べたり、士林夜市に行って占ってもらったり(日本語がよくできない人だったので、言ってることは不明)、海鮮ちゃんぽん麺みたいのを食べたり、マンゴーかき氷を食べたり(食べてばっかり笑)、もうこの時点で「旅、楽しい!」ということしか頭になかった。
自分の行きたいところに自由に行けるって、思った以上に楽しい。
有名な朝ごはんのお店にも行ったよー。
美味しかったけど、右のがかなり油っぽくてほとんど食べられなかった思い出。近くのテーブルにクラブ帰りかなと思われる若いニーチャンネーチャンが騒いでた。
そのあと台北市内をいろいろ観光して、小籠包を食べたりしながら、ここへ。
映画が好きなので、台湾の映画館で映画を観てみたいと思ったのだった。
ここは台北のミニシアター的な感じ。
日本では未公開の、菊地凛子主演アメリカ映画を観た。
まあ映画はさほどだったけれど、台湾のミニシアターの雰囲気には、いと興奮。とはいえ、日本とそれほど変わらないけれど。渋谷のイメージフォーラムと似てたかな。
ここのご飯がおいしかった。
鶏肉飯とキャベツの炒め物とつみれ汁みたいのを食べて、中でもキャベツの炒め物が最高だった。帰ってきて何回か作ってみたよね。
ホテルの近くのバス停から空港へ。台湾のバスは手を上げて止めるらしいよ。
そんなこんなで日本に帰ってきたのだった。自分へのお土産として、かわいすぎるお茶3つを購入。
文化が違うので、バスに乗ることひとつとっても緊張が走る。
そういう、びびる感覚って、大人になればなるほどあまりない。
「勝手知ったる」中で安穏と暮らしていたわたしにとって、一人旅はとても新鮮に感じたのだった。
と同時に、当時サラリーウーマンをやめて大海原へ漕ぎ出さんとしていたわたしの気分とも、じつにほどよくマッチしたのだ。
まだまだ一人旅経験の少ない若輩者ではありますが、びびりつつもなんとか出す一歩を、ご笑覧いただければ幸いです。